設立趣意
近年、パソコンの進歩やインターネットの急速な普及により、工場内においてもITを活用した変革が加速しています。工場の自動化の重要な位置を占める産業用ロボットや産業用機器もネットワーク対応が一般的となり、パソコンからデバイスが管理するデータにアクセスし、生産管理、設備診断などが可能になりました。しかしながら、パソコンとデバイス間を接続するネットワーク仕様 (メディア、プロトコルなど) やこれらを利用する仕組み (通信手段を呼び出すためのAPI仕様など) は、メーカー毎の固有なものであり、異なる通信仕様を複合させたシステムの構築には多大なコストと手間を要していました。
このような背景の下、ORiN (Open Resource Interface for the Network / Open Robot Interface for the Network) は、ネットワーク環境において異なるメーカーや機種を超え、デバイスへの統一的なアクセス手段を提供するオープンなインターフェースとして誕生しました。ORiNのプロジェクトは、1999年度からNEDOの3ヵ年プロジェクトとして、日本ロボット工業会が主体となり開発が進められました。国内主要ロボットメーカーも参加し、1999年、2001年の国際ロボット展における実証試験を経て実用性を高めてきました。2001年度に、ORiN Ver1.0仕様を制定するとともに、Ver1.0仕様に準拠したORiNソフトウェアの開発を完了しました。
ORiNは、デバイスに対し、アプリケーションソフトウェアから呼び出すアクセス・インターフェース仕様とデータ仕様を共通化します。ORiNはロボットを最初の適用対象としましたが、当初から幅広い産業用機器を適用対象とする“緩やかな標準化”のコンセプトの下で開発を進めたことにより、メーカー、装置、通信手段の違いを超え、アプリケーションソフトウェアから統一的にデバイスが管理するデータにアクセスし、取扱いを可能とすることに世界に先駆けて成功しました。これにより、サードパーティーによる多様なアプリケーションソフトウェア開発、マルチベンダーシステム構築の活発化が期待されます。また、経済効果として、製造競争力のアップ、FA市場の拡大、FA市場へのソフトウェア産業の進出、FAエンジニアリング産業の創生などが期待されます。
ORiN Ver1.0仕様の制定を機に、数多くのメリットを持つORiNを幅広く活用していただくため、開発当初から関わってきたメンバーを中心に準備を行い、2002年10月、ORiNの普及・啓蒙および時代のニーズに対応した改良を目的に、日本ロボット工業会内にORiN協議会を設立いたしました。
そして現在、NEDOの支援を受け「Industrie 4.0」、「IoT」を考慮した新しい規格として「ORiN3プロジェクト」が始動しています。